「科学的に考える数学の勉強法」
ビジネス界では当たり前に行われている、数字で科学的に分析することが、日本の教育に関してはこれまでほとんどされてきませんでした。教育のIT化が急速に進む今、子供の学習時間や学習頻度など様々なデータを分析することで、従来の“思いこみ”とは違う効果的な学習方法が見えてきます。今回は、一日のうち、いつ勉強すればいいのか、効果的な親の関わり等について紹介していきたいと思います。
(参考文献『プレジデントファミリー』)
◆ 法則1.一夜漬けは効かない
まず、「数学は一気にまとめて勉強するのではなく、コツコツ勉強したほうが成績は上がる」ことが証明されています。海外の調査で、同じ分量の数学の宿題を一方のグループは「2か月後にまとめて提出」、もう一方のグループは「2カ月の間、毎週末ごとに提出」とした場合を比べた結果、後者のほうが圧倒的に成績は良かったのです。一回の勉強時間が長くても短くても学習の進み具合に差はないのですが、1回の時間は短くてもよいから頻繁に勉強するという学習スタイルが効果的だということです。また、別の調査結果から興味深いことも分かっています。高校生400人に冬休みの勉強において、男子より女子のほうがトータルの学習時間は長く、予想通りの結果でした。しかし、注目すべきはその「学習過程」です。男子はコツコツと学習を進める傾向があり、女子は特に数学を最後にまとめて勉強する「一夜漬け」傾向があるというのです。一般的には、女子はコツコツ勉強して、男子は一夜漬け傾向があると思われがちですが、データからは逆の結果が得られました。一夜漬け傾向がある女子は、勉強量の割に数学の成績は振るわなかったということです。『女子に対しては、「コツコツ勉強することが大切だよ」と教育相談でも話をすれば、一夜漬け傾向でしている数学の成績が伸びるかもしれません。』
◆ 法則2.褒める人は多いほうがよい
勉強や宿題のことは母親に任せきりで、父親は休日のスポーツ担当という役割分担をしている家庭も少なくないと思います。しかし、「両親とも子供の教育に関心を持ったほうが子供の成績は上がる」と言われています。例えば、小学生の子供が九九をできるようになった際、最も効果的なタイミングで母親だけでなく、父親も子供を褒めてあげてください。できるのであれば、おじいちゃんやおばあちゃん、兄弟からも褒めてもらえれば、効果はさらに高まるかもしれません。
◆ 法則3.朝型がよい
「早起きは三文の徳」と昔からよく言われます。果たして、数学の学習においてもあてはまるのでしょうか。つまり、朝に勉強する方がよいのか、夜に勉強する方がよいのか。ある研究結果では、朝型の子供と夜型の子供と朝・夜ともに勉強する子供の3パターンに分けて成績を比べてみると、朝型の子供が最も学習の進みが速かったというのです。朝・夜ともに勉強する子供は、朝型の子供より少しだけ進みは遅くなるがほぼ同じくらい。しかし、夜型の子供はその半分以下の進みだったというのです。いろいろな要因もあるかもしれませんが、まずは、夜型の子供は朝型に変えることで成績向上が期待できるかもしれません。
◆ 法則4.結果でなくプロセスを大事に
子供の学力を上げるには、言葉だけでなく目に見えるご褒美も有効です。但し、「90点を取ったから」など、成績を目標にするのではなく、「どれくらい学習したか」でご褒美を決めるのがポイントです。アメリカで3万人の子供が参加した大規模調査では、「成績が上がった」ことなど、アウトプットにご褒美を与えたグループよりも、「本を読む、宿題を終える」などインプットにご褒美を与えたグループのほうが学力は上がったのです。子供は90点を取るための方法を知りません。だから成績を目標にしても成果は上がりにくいと考えられます。また、テストは問題の難易度など運にも左右されます。だから、「宿題をきちんとやる」「塾を休まない」など、自分が努力すれば必ず達成できることにご褒美を結びつけるとよいと考えられます。では、ご褒美は何がよいのかというと、小学生であればお金よりトロフィーやメダルのような、名誉に働きかけるもののほうが効果は高いという調査があります。中高生になれば貯蓄や家計簿などの金融教育とセットにしてお金をご褒美にするのもよいと思います。
◆ まとめ
IT技術の普及で、これまで分かっていなかった子供たちがいつ、どれだけ勉強したかという「学習の過程」がわかるようになってきています。今回の内容が、お役に立てていただくことができれば幸いです。
郡山事務局 教務部 佐藤 克浩